アイマスのシナリオ構成

  • Day:2010.11.04 00:29
  • Cat:総合
の活動の主旨のひとつとして、今でも筆者が本当に素晴らしいと感じている、ゲーム版アイドルマスターにおけるシナリオへのリスペクトを挙げておく。
ストーリーの内容ではなく、その構成についての考察である。
「アーケード」、「Xbox360版無印」、及び「SPのフリープロデュース」限定の話題となる。


アイドルマスターのストーリーは、プレイヤー(=プロデューサー)が、ゲーム内で「営業」を選んだ際にアイドルと交わすコミュニケーションシーン(以下、コミュ)の積み重ねによって体を成す。
ひとつひとつのコミュはそれぞれ独立した断片であり、フラグなどによる連続展開やエンディングへの影響は基本的にはない。
このため、多くの人は、「アイマスにはちゃんとしたストーリーがない」と思い込んでいるのだが……その見方はある意味正しく、ある意味で間違っている。
ゲームとしてのアイマスは、プレイヤーによって(あるいはプレイ回数によって)通過するコミュも選択もまちまちなため、どのコミュを見ても(あるいは見なくても)エンディングにつながるよう筋が通った構成になっている。
プレイの数だけ、無数のストーリーが生まれるシステムとも言える。
一方でプレイの仕方によっては、たとえベストエンドまで進んだとしても、アイドルの個性のごく表面しかなぞれない可能性も高い。

この作りこそ、アイマスシナリオの致命的な欠陥であり、無類で最高の魅力でもあるというのが筆者の意見だ。



ず、コミュの数は一アイドルあたり100近く(あるいはそれ以上)存在し、そのほとんどのコミュでストーリーが分岐する。
一つのコミュに3通りの展開というのが基本である。

選択肢の結果によって、パーフェクト、グッド、ノーマル、バッドと判定が下され、アイドルとの信頼関係や思い出に影響するのだが、厄介なことに(あるいは魅力的なことに)、ノーマルやバッドの選択の中にもパーフェクトな展開では語られないアイドルの本心や、他のコミュとつながる伏線、裏テーマなどがちりばめられており、アイドルの個性とストーリーの全貌を把握するためには不可欠な要素となっている。

たとえば、一人のアイドルの物語を把握するために、3×100=300通り、一コミュの所要時間を三分と見積もると、300×3=900分。
コミュをすべて網羅するためには、おおよそ15時間をかけなくてはいけない計算になる。
メールや祭典、休日コミュ、事務所移転なども含めると、さらに増大する。
全アイドルとなれば、さらに桁がひとつ上がる。
これに実際のプレイ時間……オーディションやレッスンや朝晩の挨拶などを加えると……
(全アイドルの全コミュ全選択肢全エンディングを見たという人間は、地球上でも片手で数えるくらいしかいないんじゃないだろうか)


も関わらず、一回のプロデュースで見ることができるコミュはそれほど多くない。
より多くのファンを獲得するためには、レッスンやオーディションに比重が移りがちだ。
たとえばベストエンドを見るためにランクAを目指すとすれば、コミュに使える回数は20に満たないだろう。

つまり、普通にプレイしていると、ストーリーを把握するどころの話ではない。
断片、小エピソードの羅列としか感じられないのだ。
担当できるアイドルが十人以上いるゲームだということも、その傾向に拍車をかける。

一アイドルのみを繰り返しプロデュースし続けるなど、よほど偏屈なプレイヤーしかやらないであろう。

ただし、そういう変人が五回、十回と繰り返し同じアイドルのストーリーを追っていくと、
「あのコミュはこれの前日談か」「このコミュはあっちのコミュの解決編だよな」「ここで低ランクの伏線回収とか、構成すごすぎ……」という具合にコミュ間の繋がりがどんどん見えてきてしまう。
しかし、変人が「アイマスのシナリオはすごいんだぜ」と叫んでみたところで、周囲は「うんうんそうだね」と引きつった笑顔で後ずさりしてゆくのみである。
思い醒めやらぬ彼はきっと、ネットで持論を展開するに違いない。
つまりこのブログである。



は、コミュをまたいで直接続くシナリオもわずかにある。
例えば、伊織のランクD「ある日の風景4」はなぜか警察署前での会話だが、これは「一日署長」コミュの直後の話だから。(ある日4でも、「一日署長さん」とPが伊織に呼びかける)
「一日署長→ある日の風景4」の流れであり、この二つのコミュは「伊織が一日署長」であるがゆえに同日のお話である。
ゲームシステム上は、一週間に一コミュしか見ることが出来ないので矛盾が生じるが、スタッフはそれを承知で構成したのだろう。
「ある日の4」とつなげるのは他のコミュでもよかったはずなのに、なぜ「一日署長」を選んだのか。
これ以上語ると伊織論になるので、あとはその道の人におまかせしよう。

例外的にストーリー分岐のある360版の美希の場合は、裏と表でも、かなりのコミュが背中合わせ(あるいは鏡合わせ)になっている。
裏表だからこそ成り立つ絶妙な対比。
これについては今後全力で、当ブログにて語っていくつもりである。



隅と際限なしにピースのハマり続けるパズル。
その結合っぷりは、さながら脳のシナプスの如し。
ギャグネタの無意味なコミュと思っていたあれやこれが、実は、アイドルのテーマと密接に関わっていたりするのだからライターの力量に感服する他ない。

こうして、ごく一部の人間は、アイマスシナリオの類い希なる深みにどっぷり浸ってしまうのである。
企画段階から意図されたものなのか、結果的にこう出来上がっただけなのかは知らないが、この手法(技法?)は、より研究・洗練して、確立させていく価値があると思う。
アイマスの範疇にかかわらず、個人的にはシナリオゲームのひとつの可能性とさえ感じている。



談だが、これはエンディングについても同様である。
成功と失敗は裏表、低ランクからおおよそすべての成功/失敗エンディングに伏線とともに、それぞれのアイドルを理解するために重要なテーマが隠されている。
だが、お気に入りのアイドルですら、すべてのエンディングを見たわけではないプレイヤーがおおよそ大半ではないだろうか。
(かくいう筆者も、美希のランクFエンドは未見である  2010.11/3現在)

たとえば、「じゃあねなんて言わないで」と美希が語り、「またな」とプロデューサーが応える結末も存在する。
「ミキをポイしちゃうんだね…。明日からは別のコと……」と非難されるエンディングと合わせて、

私のものにならなくていい そばにいるだけでいい
あの子にもしも飽きたら / わたしのことが好きなら
すぐに呼び出して


と歌うrelationsの歌世界が、美希のストーリー内で展開されていることが伺える。
その世界は裏ルートにて丁寧に昇華されるのだが、これ以上は余談の域を出るので別の機会に送ることにする。




びに、課題をひとつ、残しておく。
読者諸兄には是非この機会に考えていただきたい。

「何故、星井美希のある日の風景7はセクハラさんなのか」

もちろん理由がある。
アイドルを知る上で最重要な「ある日の風景」のラストが、何故あのコミュなのか。

次回の講義(?)では、これについての筆者の考えを語ってみようと思う。

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Comment

大変興味深い内容ですね。
美希だけじゃなく、765プロのアイドル達にハマった理由がまた一つ理解できました。
美希の事をより深く知るため、今後も定期的に見に来ますよ。
  • 2010/11/04 08:16
  • よた
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